🍱 ランチボックスの思い出 ― 韓国ノスタルジーの味

Tteokbokki
韓国の大人に「子供の頃に一番好きだった食事は?」と聞けば、多くの人が「トシラク(도시락)」と答えるでしょう。
ただの弁当ではなく、トシラクは温かさや思いやり、そして思い出が詰まった“タイムカプセル”なのです。
昔のトシラクは、シンプルな金属製の弁当箱に、素朴だけれど心のこもった料理が詰められていました。
ご飯(밥)、炒めたキムチ(김치)、焼いたスパム、目玉焼き、小さな떡갈비(トッカルビ、韓国風ミートパティ)などが定番でした。
冬になると、子供たちは教室のラジエーターの上に弁当箱を置いて温めていました。
ジュウジュウと音を立てて温まる中から立ち上る油とキムチの香ばしい匂いは、教室中を“家の香り”で満たしてくれました。
現代のトシラクは、より創造的でカラフルに進化しています。
きれいに巻かれたキンパ(김밥)、キャラクターをモチーフにした日本の「キャラ弁」風ランチボックスまで、今ではInstagramやYouTubeでも数多く見られます。
しかし、見た目が変わってもその本質は変わりません。
「愛情がこもった箱」、それがトシラクなのです。
最近では、大人も仕事にトシラクを持っていくようになりました。
保温容器に体に優しいおかず(반찬)を丁寧に詰めて、健康と見た目の両方に配慮したスタイルが主流です。
世代を超えて受け継がれてきたこの伝統は、家族をつなぎ、忙しい日々に「味」と「思い」を届けてくれます。
トシラクのふたを開けるということは、ただのランチを開けるのではなく、
台所から教室へ、親から子へと受け継がれてきた「物語」を開けることなのです。