🌶 キムチの普遍的な力 ― 発酵が生む味と芸術
キムチ(김치/主に白菜と唐辛子で作られる発酵野菜)は、韓国を代表する副菜であるだけでなく、文化・科学・芸術を体現する“生きた象徴”です。
本質的には、野菜を塩漬けし、고춧가루(韓国唐辛子粉)、마늘(にんにく)、생강(しょうが)、젓갈(塩辛/エビやアンチョビなどの発酵海産物)で味付けして発酵させた食品です。
その結果、時間とともに味が変化する、酸味・辛味・旨味が詰まった一品が生まれます。
元々は副菜(반찬)として提供されていたキムチですが、今ではその枠を越えて様々な料理に活用されています。
キムチ炒飯(김치볶음밥)、キムチチヂミ(김치전)、さらにはキムチ入りグリルチーズ、キムチタコス、キムチパスタといったフュージョン料理まで登場しています。
韓国では、冬に向けて大量のキムチを仕込む伝統行事「김장(キムジャン)」が今も大切に守られています。
ユネスコの無形文化遺産にも登録されており、家族や地域の人々が集まり、代々受け継がれた各家庭独自のレシピで大量のキムチを一緒に作る、絆の儀式でもあります。
キムチが特別なのは、時間とともに変化するという点です。
作りたてはシャキシャキとしてわずかに甘く、長期間熟成させた묵은지(ムグンジ/熟成キムチ)は深い酸味をもち、김치찌개(キムチチゲ)などの煮込み料理に最適です。
味だけでなく、キムチは健康にも良い「プロバイオティクス食品」でもあります。
腸内環境を整え、免疫力を高める善玉菌が豊富に含まれているため、多くの韓国人にとって、キムチを食べることは伝統であると同時に、日々の健康習慣であり、文化への誇りであり、「故郷の味」でもあります。
キムチを一口食べるということは、歴史、健康、そして韓国の“心”を味わうことに他なりません。